結婚式場のキャンセル支払わなきゃいけないの? 損害賠償義務の所在

Prologue

ユリコは、婚約破棄によって本予約していた結婚式場をキャンセルした。数ヵ月後、結婚式場の顧問弁護士事務所から私宛にキャンセル料金の支払い通達が届いた。ユリコには、結婚式場への支払い義務はあるのだろうか?
ユリコ
結婚式場のキャンセル料って支払うべきなの? 
先生
結婚式場のキャンセル料の支払い義務が発生するかについて判断するには2つポイントがあります。
先生
ポイントを整理しましょう。

ここがポイント!

  • 契約解除方法
  • キャンセル料が法外な額ではないか
先生
ユリコさんはキャンセル料とは何かわかりますか?
ユリコ
いえ、よくわからないわ!とにかく高いの! 
先生
キャンセル料とは、損害賠償のことです。
先生
具体的にいうと、結婚式場の予約をキャンセルする場合、カップルが特定の日時に結婚式場を予約するため結婚式場はその日程での挙式や披露宴をほかのカップルに売ることができません。その日の営業損失とそれまで打ち合わせを重ね準備してきた費用などの合計金額のことです。
ユリコ
その損害賠償を支払う義務はあるの?
先生
具体的に義務があるのか説明していきます!

契約解除で発生する損害賠償義務

 
ユリコ
契約解除の損害賠償は法律でどのように保障されているの?
先生
民法第545条1項、民法545条3項、民法第416条によると契約解除の損害賠償は下記に規定されます。
  • 解除権の行使は損害賠償の請求を妨げない。
  • 契約を解除した場合双方は損害を回復させる義務がある。
  • 契約を果たさなかった場合の損害賠償の請求は、通常生じる損害を賠償させることを目的とする。
  • 特別の事情によって生じた損害でも契約した方がその事情を予測することができた場合、契約させた方は賠償を請求できる。
先生
契約解除で発生する損害賠償義務は法律で保障されています。また、その保障に関する判例も紹介します。

最高裁判所第二小法廷 昭和27(オ)第572号

 

損害賠償請求

判旨:売主が目的物を給付しないので売買契約を解除された場合、買主は解除の時までは目的物の給付請求権を有し解除により始めてこれを失うと共に請求権に代えて履行に代る損害賠償請求権を取得するものであるする。一方売主は解除の時までは目的物を給付すべき義務を負いも解除によって始めてその義務を免れると共に義務に代えて履行に代る損害賠償義務を負うに至るものである最高裁判所第二小法廷 昭和27(オ)第572号 損害賠償請求
ユリコ
契約を解除すると、損害賠償は絶対払わなければいけないのね!
                
先生
確かに、契約解除の損害賠償はこのように法律で保障されています。
先生
しかし、契約を解除する方法によって損害賠償義務がある場合とない場合があることを知っていますか?
ユリコ
そんな情報知らないわ!教えて!
先生
では、初めに契約解除の方法から解説していきます!
               

契約解除の説明

先生
契約の解除の方法には、3つのパターンがあります。

3つの契約解除のパターン

  1. 合意解除(契約期間中に双方が協議して契約を解除する場合の解除)
  2. 法定解除(相手方が契約を守らなかった場合や売買契約で欠陥があった場合の解除)
  3. 約定解除(特約で解除権が定められている場合の解除)
 
ユリコ
合意解除は、互いに話し合って契約解除することね!
先生
そのとおりです。合意解除の場合、原則としてお互いの合意によって契約を解除しているため損害賠償義務は無いと考えられています。また、その根拠となる判例も紹介します。

最高裁判所第三小法廷 昭和29(オ)第902号

前渡金代金返還並びに損害賠償請求

論点:
  1. 合意解除の場合と原状回復義務の存否
  2. 原告(買主)が法定解除を主張し民法第五四五条により前渡代金の返還を請求している事案において法定解除が認められず合意解除が認められた場合と右請求の当否
判旨:
  1. 合意解除の場合は、民法第五四五条による原状回復義務は生じない。
  2. 原告(買主)が、被告(売主)の債務不履行を理由として売買契約の法定解除を主張し、民法第五四五条により、前渡代金の返還を請求している事案において、右法定解除が認められなかつた場合は、たとえ原告の否認する合意解除の事実が認められても、当該訴訟においては、原告の右前渡代金返還の請求は排斥を免れない。
最高裁判所第三小法廷 昭和29(オ)第902号 前渡金代金返還並びに損害賠償請求
ユリコ
法定解除は、どのような解除なの?
先生
法定解除とは、相手方が契約を守らなかった場合や売買契約で欠陥があった場合の解除です。法定解除にはいくつか例があります。

いくつかの法定解除

  • 履行遅滞理由による解除
  • 定期行為による解除
  • 履行不能
ユリコ
どれも意味がわからないわ!説明して!
先生
確かに聞きなれない言葉ですからね。
先生
履行遅滞理由による解除を説明すると、民法第541条に規定があります。
当事者の一方が債務を履行しない場合、相手方が特定の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がない場合相手方は契約の解除をすることができる。
先生
つまり当事者の一方が契約を指定期間内に果たさなかったとき、他方が契約を果たすように促し、それで果たされなかった場合は解除できるということです。
ユリコ
そんなの解除できてあたりまえね!
ユリコ
定期行為による解除は?
先生
民法第542条で下記に規定しています。
契約の性質や当事者の意思表示により、特定の日時や一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は催告をすることなく、直ちにその契約の解除をすることができる
ユリコ
定期行為ってそもそもどういう意味?

定期行為

結婚式当日に用いる衣装の貸借などのように、一定の時までに履行しなければ契約目的を達することができない行為。 大辞林 第三版
先生
つまり、特定の期間を過ぎると効果がなくなる契約の場合、その特定の期間が過ぎたら契約をすぐに解除できるということです。
ユリコ
履行不能は?
先生
民法第543条に規定されています。
履行の全部又や一部が不能となったときは、債権者は契約の解除をすることができる。
先生
契約が果たせなくなった場合、その契約を解除できるということです。
先生
これらの法定解除の場合、相手側に過失があるため損害賠償義務はありません。
ユリコ
最後の約定解除とは何なの?
先生
約定解除とは契約の中で解除するときの条件が決められている解除です。いくつかの条件の例を挙げますね。

いくつかの条件例

  1. 手付金の支払いがあり、返金されない
  2. 解約による、損害賠償の支払い金額
  3. 解約には解約金の支払が必要
先生
これらは、具体例の一部なので契約で定められている例はほかにもたくさんあります。
ユリコ
私、結婚式場を予約したときに契約内容に解約した場合の条件があったのを思い出したわ!そうなると私の場合、約定解除に該当してると思うわ!
先生
結婚式場での予約をする場合、大半の結婚式場では日本ブライダル事業振興協会が提案している契約書を参考に書類を作成しています。その契約書内には解約時の損害賠償についても明記してありその条件でカップルは契約しているので原則は約定解除となります。
先生
また、約定解除の場合、契約で定められている内容については原則として従わなければいけません。契約についての効力は民法521条にあります。
  • 承諾の期間を定めてした契約の申込みは撤回することができない。
  • 申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
先生
よって、契約書の効力によって損害賠償義務が発生します。

キャンセル料が法外の場合

ユリコ
結局、損害賠償義務は発生するのね!
先生
約定解除の場合、支払わなければいけません。しかし、損害賠償義務がなくなるかもしれない可能性があります。
ユリコ
はやく教えて!
先生
それは、消費者契約法9条1号に規定されています。
当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、または違約金を定める条項で合算した額が当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分を無効とする。
ユリコ
どういうこと?
先生
結婚式場の利用契約については、結婚式場ごとに定められています。キャンセル料も規定があり結婚式場も規定によってキャンセル料を請求しています。しかし、結婚式場の規定された損害賠償が高額で損害を超えるような場合は無効となるということです。
ユリコ
つまり、契約を無効にできる可能性があるということね!
先生
はい。消費者契約法9条1号によって契約が無効となった判例も紹介します。

東京簡易裁判所 平成17(レ)第67号

不当利得返還請求控訴事件

概要:控訴人は結婚式場及び結婚披露宴会場の運営を行っている被控訴人に対し結婚式予約金として金10万円を支払ったが、その予約金の返還を求めた。これに対し、被控訴人は、本件において結婚式場利用契約は有効に成立してると主張した。

判決:本件においては平均的な損害として具体的な金額を見積もることはできず、本件予約の解除に対する関係において無効である。したがって、控訴人の請求を棄却した原判決を取り消し、控訴人の被控訴人に対する請求は理由があるから、これを認容することとし、主文のとおり判決する。

東京簡易裁判所 平成17(レ)第67号 不当利得返還請求控訴事件
先生
約定解除を行ったユリコさんは、原則としてキャンセル料が法外な額ではない限り結婚式場へ支払い義務が発生します。
ユリコ
わかったわ、潔く全額支払うわ!
ユリコ
いろいろ、勉強になったわありがとう!

Epilogue

ユリコは結婚式場への賠償金を支払い、翌月知人紹介で知り合った男性と結婚。二人の子供にも恵まれ幸せにすごした。

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